ケアする人をケアする

介護・育児中のご家族、それを支える専門職、そんな「誰かをケアする人」のケアを考えます。

「POOマイスター」の取り組みに学ぶシステムづくりのヒント

出版されたばかりの一冊の雑誌に目が留まりました。

それは、コミュニティケア 2018年11月臨時増刊号

 

 「地域包括的排便ケア」にチャレンジ!

気持ちよく出す!「おまかせうんチッチ」

排便ケアの質を向上させる

 

というタイトルです。

 

「地域包括的排便ケア」や「POOマイスター」という見慣れないワーディングに興味をひかれ、ページをめくってみました。

 

企画協力者であり、著者である榊原千秋さんの略歴を拝見すると、スタートは愛媛県宇和島市津島町の保健師だとか。

ほぼ同じ年代に私自身が保健師だったこともあり、さらに興味を惹かれました。

 

榊原さんの原点は、「すべての人が気持ちよく排泄できる社会をつくろう」というコンチネンス協会の理念。

現在、榊原さんは、「POOマスター」(うんちのことをマスターした人)を養成し、排泄ケアにおける本人、家族、介護者の「Triple-Win」を目指した活動が全国でなされる仕組みづくりに奔走しておられます。

そして、個別の排便ケアのみならず、地域に排便ケアのネットワークをつくり、「地域包括的排便ケアシステム」としてPOOマスターが力を発揮できるようご尽力されておられます。

 

現在、POOマスターは130人、全国20都道府県で活躍されているとのこと。

排便のトラブルで尊厳が傷つき、生活レベルも低下しふさぎ込んでいたご本人も、POOマスターの介入で笑顔と活気を取り戻し、家族や介護者にも大きな成果があったことが報告されていました。

そして、その成功体験の積み重ねが施設全体、地域への波及していく。

そんな力強い記事が満載でした。

 

そのなかでも印象に残ったのは、成果を上げている彼女の「地域包括的排便ケア」のエッセンスです。

 

①理念が明確であること

②誰もが悩むけれど言葉にするのが難しい排泄問題に焦点が当たっていること(ニーズの大きさ)

③教育(人づくり)のみならず、所属施設内、地域のなかで育った人が機能するための仕組みづくりを考えていること。「小さな成功体験」を大切にすること

④排便ケアを基盤としたコミュニティケアの実践者の育成を目指したPOOマスター養成研修会が、1か月のOJTを含む全4日間という受講しやすいものであること

⑤POOマスターのフォローアップの体制があること

⑥多職種によるチームで取り組みためには、「共通言語」と「共通のツール」が必要

などなど。

 

数々の知見に裏打ちされたシステムづくりに向かう行動力には、脱帽!

たくさんの学ぶところがありました。

 

「ケアする人のケア」のシステムづくり。

とりわけ、医療や福祉の現場でケアを生業とする人々をどうケアするのか、たくさんのヒントをいただいたような気がします。