ケアする人をケアする

介護・育児中のご家族、それを支える専門職、そんな「誰かをケアする人」のケアを考えます。

良いナースのひとつの条件

前回に引き続き、浜田晋先生のご著書から。

 

白内障の手術をしてくださった、まだ若い女医さんからこんなことを言われた。「ものがはっきり見えだしたといって、読書やご執筆をあまりやり過ぎないでください。レンズはしょせん"もの”にしかすぎませんから、水晶体のように厚くなったり薄くなったり自然の調節することができません。眼鏡で若干の調節はできますが、白内障が治ったのではありません。お疲れになるのは当然のことです」と。

 

 

 先生はこのように続けています。

 

書店へ行くと「名医(専門別)」の一覧表がたくさんでている。だいたい大学や大病院の医長先生の名前が書いてあるが、私は全くそんなものを信用しない。タイムリーに腑に落ちる言葉数の多い先生が良い先生だと思っている。 手術や診断がうまいだけでは医者はだめである。患者が先生の言葉でほっとすることが大切なのである。 

 

 

白内障の手術をしたものの、期待したように見えず、不安を募らせていた先生。

白内障の治療で入れたレンズは、つまるところ”もの”だと説明を受け、なるほどと納得なさったそうです。

名医の条件は、手術や診断だけでなくなく、「言葉」もそのひとつだというのが浜田先生の主張です。

 

先生がおっしゃっているのは「医師」についてですが、これはナースにも言えることではないでしょうか。

ナースに言い換えてみると、「タイムリーに腑に落ちる言葉数の多いナースが良いナース」ということになりますね。

そして、「手技やアセスメントがうまいだけではナースはだめである。患者がナースの言葉でほっとすることが大切なのである」と。

 

腑に落ちる言葉を持ち、しかもそれはタイムリーでなければならない。

大きく頷きました。

腑に落ちる言葉・・、それは状況によって意味合いも異なるでしょうが、ひとつは比喩を上手に使うことが大切だと常々思っています。

「例え話の名人になる」ということです。

 

「つまり、例えていうとこういうことなんです・・。」

現象の本質をうまくつかまえ、かつ誰もがイメージしやすい例え話の引き出しをたくさんもつ。

しかも、それをタイムリーに駆使するためには、日ごろから「何かに例える」ことに意識的にトライすることが有効であるように思います。

相手のもやもやしていた胸の内が、「ああ、そうことなのか」と合点がいきストンと腑に落ちる。

ナースとして、そんな「言葉の力」を身に着けたいものですね。

 

それにしても、浜田先生のご著書にように、現場のナースが読んでストンと腑に落ちる示唆に満ち、平易な言葉で語りかけてくる書籍となかなか出会わなくなってしまいました。

研究論文や専門書とは異なるいわゆる「読み物」。

当たり前の言葉で当たり前に看護を語りたい。

8年前に出版された本を読み返しながら改めて思ったのでした。