メッセンジャーナースをご存知でしょうか?
以前、乳がんを体験した友人が、主治医との関係にとても悩んでいました。
乳がんという診断に驚き、戸惑い、ただ、「温存できる」という医師の言葉に救われ受けた手術。
しかし術後、彼女は打ちのめされました。
ハーフサイズになってしまった不揃いな胸がどうしても受け入れられず、正視できない日々。
放射線治療が終了したころで「どうしても再建したい」そんな気持ちがムクムクと。
ところが、彼女曰く、「放射線治療をした皮膚は再建が難しい」と医師からは一蹴され、「今さら、何を言うのか!」という気まずい雰囲気に。
それ以来「再建」という言葉は出せなくなってしまったそうです。
乳がんの専門医が限られている地方のことゆえ、主治医を変えるのは不安もあり、眠れないほど悩む日々が続きました。
そんな彼女に家族も、「別に胸なんかどうだっていいじゃないか」と苛立つことも。
ますます孤立感を深めた彼女は、安定剤が手放せなくなってしまいました。
「ナースに相談してみたら?」
そんな言葉をかけたこともありましたが、彼女は首を横に振り、「あの先生は気難しい先生で有名だから、看護師さんも困ってる」と。
友人が欲していたのは、親身になって聴いてくれる主治医の態度と、納得のいく説明でした。
「そうですか、そんなに悩んでおられるのですね・・」そんな一言で、胸のつかえが下り、気持ちがほどけていったのではないでしょうか。
そして、再建したいという友人の気持ちに添って、その可能性を共に探ってもらいたかった。
「ダメだと却下せず、あの時に形成外科に紹介してもらいたかった・・・」そう友人は唇を噛んでいました。
主治医に伝えたいことがうまく伝わらない。
言われていることの意味がよくわからない。
一方的に断定されるだけで、話し合いにならない。
「どうしますか?」と選択を迫られるけれど、自分では決められない。
話し合いをしても、責められているような気持ちになって辛い。
こんな医療現場でのサービスの受け手と担い手のコミュニケーションギャップ。
誰か通訳して埋めてくれないかと切望したことはありませんか?
納得した選択ができるよう、医療者との間に入ってとことん自分と付き合ってくれる専門家が欲しいと思ったことはありませんか?
実はこうしたニーズに応え、第三者の立場から、医療者と患者・家族の架け橋をするために育成されているのがメッセンジャーナースです。
メッセンジャーナースは、一般社団法人よりどころ[メッセンジャーナース認定協会]に登録され、認定証を取得・持参しています。
彼らは、起業して個別のご相談、介入をするだけではなく、医療の受け手と担い手のギャップを埋めるべく職員の教育に当たったり、市民講座を開催したり、あるいはサービスの受け手のニースをくみ取った介護サービス事業所を立ち上げたりなど、実に幅広い活動をなさっています。
2018年12月現在、全国34都道府県に122名の方々がご活躍だそうです。
先にご紹介した友人は、結局再建への想い断ちがたく、自分でセミナーに出かけ、同じ乳がん体験者の会に出席し、情報とつてを手繰り寄せて、手術にこぎつけました。
苦難の数年間でしたが、再建した胸だけではなく、「自分の気持ちを貫いて自ら行動した」という何者にも代えがたい自信を得たようです。
しかし、「他の人にはこんな思いはさせたくない」これが彼女の口ぐせです。
多忙を極める医療現場。
医療者と患者・家族とのコミュニケーションギャップは双方がいくら努力をしても、完全に防ぐことは難しいですね。
メッセンジャーナースがもっともっと身近にいて欲しい。
そう願わずにはいられません。