「考える」ことから離れればやり甲斐や達成感からも遠ざかる
ここ数日、朝晩の冷え込みが厳しくなり、急に秋が深まってきました。
そして、老親の老いがさらに進み、実家通いの日々を過ごしています。
さてさて、「老い」といえば、「世界の小澤」と称されたマエストロ、小澤征爾さんも、御年83歳。
74歳で受けた食道の全摘手術以来、やはり体力の衰えが。
そんな小澤さんの、女性アナウンサーとの対談番組の動画を観ました。
ここのところ体調不良により、オーケストラの指揮の降板が続いていたとのこと。
12月には、舞台に立たれるとのことで、瞳を輝かせておられました。
久しぶりの舞台にかける意気込み、音楽に対する迸る情熱がストレートに伝わってきました。
そんな小澤征爾氏。体調を気遣うアナウンサーに、
「大丈夫、大丈夫。手(の動き)はあんまり関係ない。結局指揮で大事なのは、ここ。頭なんだよ。頭さえしっかりしてたら大丈夫」
そう話していました。
オーケストラを指揮するようになって半世紀。
いまだに、日々楽譜を読み込み、作曲家の表現したかったことは何なのか、探求を続け、年を経るほどに「発見」があると。
「頭が一番大事」。83歳のマエストロのそんな言葉から、「考え続ける」ことがいかに大切かを今更ながら痛感したのでした。
そんなことからふと思ったは、昨今の医療や福祉の現場。
「〇度以上の発熱にはこの薬」
「3日以上排便がないときにはこの薬」
「痛みがあるときはこの薬」
などなど・・。
「どうして熱が上がっているんだろう?」
「本当に便秘なの?」「便秘はどこから?」
「痛みはどうして?」
多くの医療・福祉の現場では、そう問いかけることより「とりあえずどうする?」が優先され、何かにつけてスタッフが考えなくなっているという管理者の嘆きも、聞いています。
きっと個人の問題を超えたシステムの問題が横たわっているのでしょう。
ただ、「考える」ことから離れていけばいくほど、やり甲斐や達成感からも遠ざかっていく。
ベートベンは、ショパンは、モーツアルトとは、いったい何を表現したかったのかを考え続けていると語る小澤征爾さんの言葉から、そんなことを感じたのでした。