看護師よ、街に出よう!
昨日、実家から戻り、まずは近くのスーパーで買い物をと出かけたところ、駐車場で友人のAさんに声をかけられました。
Aさんの87歳になるお父さまが体調を崩し、ここ3日ほど食欲が落ちているのだけれど、どんなものを食べさせたらいいのだろうかというご相談でした。
「食べれるものなら何でも」
そう、かかりつけの先生には言われているのだけれど、その「何でも」が一番難しいと友人は頭をひねっていました。
私は、私がずっと昔に看護職として働いていたことを知っている地域の人から、本当によく相談を受けます。
・子供が熱を出した。下痢が続いているんだけど。
・これは何科にかかればいいの?
・健康食品ってどうなん?
・検査結果を聞いたけど、よおわからんかった。
・夫が挙動不審でおかしいねん。これ病気?
・姑の認知症でヘトヘト。
・どっかいい病院ない?
などなど・・。
皆さんのニーズは、日々の生活のなかでわきあがる「ちょっとしたこと」を相談したいというもの。
お茶をしながら、一緒にランチをしながら、話題はいつしか「健康相談」。
そして、自分や家族のちょっとした悩みごとから地域の話題へと広がるのもいつもの決まり事。
「こんな人、いてるんやけどどないしよ」
「うちの近所にもいてはる。どうしたらいいんやろう」
看板こそ出してはいませんが、その中身は、「町の保健室」さながらです。
少子高齢、人口急減社会を迎え、皆が「ピンピンコロリでいきたい」と熱望すると同時に、山間の地域でも「孤独死」が決して人事ではなくなっています。
身体のこと、心のこと、家族のこと、近所の人のことを誰かに相談したいけれど、わざわざ役所や保険センターに出向くのは敷居が高い。
そんなこの町の状況を肌身で感じていたところ、
という存在があることを知りました。
行政や企業、学校に所属する保健師でもなく、
病院や訪問看護ステーションで働く看護師でもないコミュニティーナース。
まだ誕生して約3年という生まれたてのほやほや。
若きリーダーの元、さまざまなチャレンジが生まれています。
コミュニティーナースとは、
「病院や福祉施設、訪問看護に従事する看護師と異なり、
地域の中で住民とパートナーシップを形成しながら、
その専門性や知識を活かして活動する医療人材のことです。
地域で中長期的に住民と関わることで、
健康的なまちづくりに貢献することを目指します。」(HPより)
と紹介されています。
保健師のような「制度のしばり」がないこと、
訪問看護師ではなかなか接点をもちにくい健康な住民への予防的なアプローチが可能であること、
人と人を結び付け、ネットワークを形成して地域を動かしていくことなどが特徴でしょうか。
ソーシャルデザインの手法が求められるのも施設内の看護とは大きく異なる視点です。
先駆的な活動ゆえに、果たして「コミュニティーナース」として生計が立てられるのか、パイオニアたちの挑戦が続いています。
看護師といえば、病院か施設か訪問看護ステーション。
保健師は行政か学校か企業。
そんな固定的な枠にとらわれず、看護の可能性を広げる柔軟な発想と行動力、そして情報発信力は本当に素晴らしい!
コミュニティーナースを目指す皆さんの表情のなんと素敵なこと!
駆け出しの保健師だったころ、住民の皆さんに言いようのないパワーをいただいたことを鮮明に思い出しました。
地域には、地域の人々には、看護師を元気にする秘密の力が隠されているようです。
病院に勤務しながら、月に1度でも院外のこうした活動に顔を出してみるのはいかがでしょう。
凝り固まりがちな発想や視点を、きっと柔らかくほぐしてくれるものと思います。