「家族看護」という言葉をご存知でしょうか?
「家族看護」という言葉をお聞きになったことがありますか?
「家族看護」とは、病気や障害とともに生きる当事者(患者さん)だけではなく、有形無形の影響を受けて支援を必要としているご家族を、「ご本人とともに丸ごとサポートしていきましょう」という考え方に基づいた看護実践です。
1970年代に北米で誕生し、1990年代前半に我が国に導入されました。
24年前には、日本家族看護学会も設立され、全国の看護師たちが研鑽を積んでいます。
2008年には、「患者さんのみならずそのご家族を丸ごと支援する」、このことに高い専門性をもつ「家族支援専門看護師」が誕生し、現在50名を超える方々が急性期医療、緩和医療、あるいは小児領域、在宅ケアの場などで活躍しています。
例えば、昨日ご紹介した友人は、乳がんの温存手術後、家族のなかでも孤立を深めました。
手術、放射線治療を終えても、未だに「失くした胸を取り戻したい」「こんなハズじゃなかった・・」といつまでもグズグズしている妻に夫は、「胸なんかどうだっていいじゃないか」と苛立ちを強めました。
彼女は、「夫にはわかってもらえない」と孤立感を深め、夫婦の関係性にも緊張が走りました。
そして高校生の息子さんは、そんな両親を前にどうしてよいかわからず、ますます無口になり、さらに、彼女の実母が要介護状態になったことが、事態に拍車をかけていました。
実母は、連日のように彼女を呼び、愚痴とも嘆きともつかない話しを延々と。気分がめいり、体調もすぐれず、主治医とは没コミュニケーション。
いったい誰に助けを求めたらいいのか、本当に長い間、彼女もご主人も、そして息子さんも苦しい時を過ごしていました。
誰かが病気になる、障害を負うという出来事は、本人だけの問題ではなく、家族全体にさまざまな影響をもたらします。
その家族に起こったさまざまな影響が、またご本人にふりかかり、苦悩を強めるという悪循環を来していることが多いものです。
このようなときに、家族全体に何が起こっているのかを視野に入れて支援するのが「家族看護」であり、家族支援専門看護師です。
制度上の問題もあり、家族全体を視野に入れた看護の広がりは、とても地道なものです。
地道なものではあるけれど、少子高齢人口急減時代を迎えた今、今後ますます大切にしていかなければならない視点だと感じています。
今、全国に研究会の支部を拡げようという動きが始まっています。
先の友人が、ご主人が、そして息子さんが、気軽に相談してもらえるように、そして、患者さん・ご家族と一緒に考え、目の前の難局を共に乗り越えていけるよう、私たち支援する側の力をもっともっとつけなければと思っています。